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IQの計算方法:「精神年齢÷生活年齢×100」はもう使われていない――偏差IQの本当の求め方

「精神年齢÷生活年齢×100」は1912年の式で、現代の知能検査では使われていません。今のIQを決めている偏差IQの式に、実際に数字を入れて計算してみます。

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同年代の集団を表す曲線上で、一人の人物が自分の位置を示すように中央の高い場所に立っている。

「IQ 計算方法」と検索すると、今でも「精神年齢÷生活年齢×100」という式がよく出てきます。ですが結論から言うと、この式はもう使われていません。現在の主要な知能検査はほぼすべて「偏差IQ」という方式です。同じ年齢の集団の平均を100と置き、そこからのずれを点数にします。

式にするとこうです。

IQ = 100 + 15 ×(あなたの得点 − 同年齢集団の平均点)÷ 標準偏差

標準偏差とは、得点の散らばりの大きさを表す数字です。この記事では、古い式がなぜ捨てられたのかを東京大学のサーバーで公開されている解説の例で確かめてから、今の式に実際に数字を入れて計算してみます。

1912年に生まれた式:シュテルンの「比率IQ」とは

精神年齢を生活年齢で割るという発想は、1912年にドイツの心理学者ウィリアム・シュテルンが示したものです。日本大百科全書もこの年号でシュテルンの名を挙げています。精神年齢とは、検査の成績が「平均的な何歳児に相当するか」を表す数字。生活年齢は実際の年齢です。

これに100を掛けた「精神年齢÷生活年齢×100」が、いわゆる比率IQです。1916年、アメリカのターマンが改訂したスタンフォード・ビネー検査がこの計算を採用し、世界に広まりました。

例を挙げます。8歳の子どもが、平均的な10歳児と同じ成績を出したとします。計算は10÷8×100で、IQは125。「実年齢より25%進んでいる」という発想です。

シンプルで直感的です。それなのに、なぜ捨てられたのでしょうか。理由は大きく2つあります。

同じIQ125でも知能レベルは違う――東京大学の解説が示す矛盾

1つ目の理由は、年齢が違う子ども同士を比べると式が破綻することです。東京大学教育学部のサーバーで公開されている知能指数の解説が、わかりやすい例を挙げています。

大きさの異なる二人の人物の頭上に同じ大きさの印があり、背後の測定棒だけが異なる高さを示している。

8歳の子どもが10歳レベルの成績を出すと、10÷8×100でIQ125。12歳の子どもが15歳レベルの成績を出すと、15÷12×100で、こちらもIQ125。数字は同じです。

でも2人の知能レベルは同じではありません。前者は10歳レベル、後者は15歳レベルです。同じなのは「精神年齢と実年齢の比」だけで、それ以上の同等性は何もない――解説はそう指摘します。さらにこの数字は、年齢と関係ない絶対的な値だと誤解されやすいことも問題でした。

つまり比率IQは、同じ年齢の中でしかまともに比べられない数字だったのです。

精神年齢は15歳前後で頭打ちになる――大人に使えない理由

2つ目の理由は、もっと決定的です。日本大百科全書は、15歳を過ぎると知能検査の得点の伸びが鈍り、実年齢に比例しなくなるため、比率IQを使うと不合理な結果が生じると説明しています。集団としての知能は、検査にもよりますが15歳から20歳代で発達の頂点に達するとされます。世界大百科事典も、精神年齢が意味を持つのは知能が年齢とともに伸びる16歳ごろまでだと述べています。

分子の精神年齢が止まったまま、分母の生活年齢だけが増え続けたらどうなるか。仮に精神年齢の上限を18歳とすると、ごく平均的な40歳の人でも18÷40×100でIQ45になってしまいます。計算として破綻しています。

だから成人の知能を精神年齢で表すことには、ほとんど意味がありません。比率IQは、大人にはそもそも使えない式だったのです。

今のIQの計算方法:偏差IQの式に数字を入れてみる

この2つの問題を解決したのが偏差IQです。日本大百科全書によれば、1939年にニューヨークのベルビュー病院にいたデイヴィッド・ウェクスラーが作った「ウェクスラー・ベルビュー知能検査」で初めて採用されました。本家のスタンフォード・ビネー検査も、1960年の改訂版で偏差IQに切り替えています。

考え方はこうです。年齢はもう割り算に使いません。代わりに、同じ年齢の集団の中で、あなたの成績がどの位置にあるかを測ります。冒頭の式をもう一度書きます。

IQ = 100 + 15 ×(あなたの得点 − 同年齢集団の平均点)÷ 標準偏差

実際に計算してみましょう。ある検査で、あなたと同じ年齢集団の平均が50点、標準偏差が10点だったとします。

  • あなたが50点なら、平均との差は0。IQはちょうど100です。
  • 60点なら、差は10点で標準偏差1個分。100 + 15×1 = 115。
  • 70点なら標準偏差2個分上で、100 + 15×2 = 130。
  • 40点なら1個分下で、100 − 15 = 85。

実際のWAISやWISCでは下位検査ごとの換算表を使うので、受検者が手計算することはありません。それでも、出てくる数字の意味はこの式の通りです。

偏差IQが表すのは「賢さの量」ではなく「同年代の中の位置」

偏差IQの数字は、何かの量ではなく順位に近いものです。IQ115は平均より標準偏差1個分上で、同年代の約84%より高い位置。IQ130は2個分上で、上位およそ2%に入ります。

この方式なら、8歳でも40歳でも意味が変わりません。8歳は8歳の集団と、40歳は40歳の集団と比べるからです。年齢をまたいだ比較の破綻も、精神年齢の頭打ちも、どちらの問題も消えました。

1つだけ注意があります。ウェクスラー式は標準偏差を15としますが、検査によっては16を使うものもあります。1960年版のスタンフォード・ビネーがその例です。同じ成績でも、受けた検査が違えば数字が少し変わるということです。

田中ビネーVが14歳を境に計算方法を切り替える理由

では比率IQは完全に絶滅したのかというと、そうではありません。日本で広く使われてきた田中ビネー知能検査V(2003年、田研出版)は、2歳から成人までを対象に、年齢で計算方法を切り替える二層構造をとっています。

13歳11か月までは、伝統通りに精神年齢を出し、比率IQを計算します。子どもの知能は年齢とともに伸びるので、この範囲なら精神年齢に意味があるからです。

14歳以上は「成人級」の問題に切り替わり、精神年齢はもう算出しません。代わりに偏差知能指数(DIQ)を使い、結晶性・流動性・記憶・論理推理という4つの領域別DIQと総合DIQを出します。ここまで見てきた頭打ち問題への、検査設計としての答えがこの二層構造です。

なお2024年に発売された後継版の田中ビネーVIでは、2歳0か月から13歳11か月の子どもにもDIQが導入されました。比率IQの居場所は、さらに狭くなっています。

古い式が今も検索上位に出てくる理由

それでも「IQ 計算方法」で検索すると、「精神年齢÷生活年齢×100」を現役の式として紹介するページが今も上位に並びます。歴史の説明としては正しいのですが、あなたがこれから受ける検査の説明としては正しくありません。病院で受けるWAIS-IVやWISC-Vも、田中ビネーの成人級も、結果に出てくる数字は偏差IQです。

覚えておきたいのは一点だけです。現代のIQは「実年齢より何年分進んでいるか」ではなく、「同年代の中でどのあたりにいるか」を示す数字です。もう割り算はしていないのに、Intelligence Quotient(知能の商)という名前だけが残りました。IQの「Q」は、1912年の式が置いていった歴史の化石なのです。

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